精鋭
以前親が購読していた新聞の連載小説を少し読んで、漠然と気になっていた小説です。あれから何年経ってこの文庫本を手にしたのでしょうか。
あらすじでは、「若い警察官の成長を書く」とありました。主人公である柿田は成長したのでしょうか。私にはわかりませんでした。
最初は「自分は警察官に向いているのだろうか」と迷っていたのが、機動隊やSATの訓練を通して、もやが晴れていくのは感じましたが……。
個人的に印象に残ったのは陸士長の市ノ瀬が柿田に引用した、沖縄の偉い先生の言葉です。
「長年修行して体得した空手の技が、生涯を通して無駄になれば、空手道修行の目的が達せられたと心得よ」(309頁)
あってはならないことや、めったにないことに備えることは、とても辛いと思います。モトを取りたいと思う気持ちが働くと思います。
心の底から「達せられた」と思えるのは、色々と捨てる覚悟のある、別次元の人間なんでしょうね。